PTFE(フッ素樹脂)コーティング 技術解説ガイド
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)は、日本語名称を「四フッ化エチレン樹脂」と呼び、フッ素と炭素のみから成るフッ素樹脂です。ほとんどの化学薬品・溶剤に対して不活性であり、氷よりも低い摩擦係数を備えています。本ガイドでは、生産量・使用量ともにフッ素樹脂の中で最大を誇るPTFEの特性と、コーティングがもたらす産業的価値を解説します。
PTFEの主要特性
広帯域耐熱性
-196℃から260℃の広い温度帯で物理的・化学的性質を維持します。極低温環境から過酷な高温プロセスまで、安定した連続使用が可能です。
極低摩擦・自己潤滑性
固体の中で最小クラスの摩擦係数を有し、「氷の摩擦係数より低い」潤滑性を発揮。無潤滑での摺動を可能にし、部材の摩耗を劇的に抑えます。
卓越した耐薬品性
強酸、強アルカリ、有機薬品に対して極めて安定。皮膜が溶解・劣化することがほぼなく、過酷な腐食環境から基材を完璧に遮断・保護します。
高度な非粘着・離型性
粘着性の強い物質が付着しにくく、付着しても容易に剥離します。生産ラインの汚れ防止、洗浄工程の簡略化、歩留まり向上に大きく貢献します。
優れた電気絶縁性
体積抵抗率が非常に大きく(>10¹⁸ Ω·cm)、優れた絶縁性を保持。高周波環境下でも誘電損失が極めて少ないのが特徴です。
零吸湿・撥水性
吸水率は0%です。水分を全く吸収しないため、湿度の高い環境下でも寸法安定性が損なわれず、電気特性の劣化も起こりません。
膜厚の設計と選択
薄膜仕様 (5〜20μm)
精密部品や、寸法公差が厳しいワークに適用。潤滑性や軽微な非粘着性を付与するのに最適です。
標準仕様 (25〜50μm)
一般的な産業機械部品。非粘着性、低摩擦性、耐薬品性をバランスよく発揮する最も汎用的な膜厚です。
厚膜仕様 (100μm〜)
高度な防食性や、長期間の耐摩耗性が求められる環境に。複数回の重ね塗りにより、ピンホールのない緻密な膜を形成します。
テクニカルデータ
| 項目 | PTFE 代表値 | 備考 |
|---|---|---|
| 常用耐熱温度 | -196℃ ~ +260℃ | 連続使用可能な最高温度 |
| 摩擦係数(対鋼) | 0.05 ~ 0.10 | 荷重・速度により変動 |
| 体積抵抗率 | > 10¹⁸ Ω·cm | プラスチック中で最高レベルの絶縁性 |
| 絶縁破壊強さ | 19 ~ 80 kV/mm | 膜厚および形状に依存 |
| 誘電率 (1MHz) | 2.1 | 非常に低く、周波数変化に影響されない |
| 吸水率 | 0.00 % | ASTM D570準拠 |
| 耐薬品性 | 不活性 | 溶融アルカリ金属等を除くほぼ全ての薬品 |
PTFEコーティングに関するQ&A
技術的な留意点
PTFEは分子間凝集力が小さいため、物理的な摩耗に対しては比較的柔軟な性質を持っています。過度な面圧がかかる摺動部や、硬い研磨材を含む流体、金属製スクレーパー等の物理的接触がある箇所では、膜厚の減少や剥離が生じる可能性があります。
性能を最大限に維持するためには、柔らかい清掃用具の使用や、定期的な摩耗チェック、必要に応じた再コーティングの実施を推奨します。また、基材との密着性を高めるための下地処理(ブラスト加工等)の選定が、コーティング寿命を左右する極めて重要な工程となります。