流動浸漬法(りゅうどうしんしほう)とは、粉体塗装の一種で、タンク内の粉末樹脂を空気によって液体のように流動させ、加熱した金属製品を浸してコーティングする技術です。本記事では、その仕組みから各樹脂の特性、メリット・デメリットまで、技術選定に役立つ情報を網羅的に解説します。
1. 流動浸漬法の仕組みと加工プロセス
流動浸漬法は、主に厚膜のコーティングを目的とした塗装方法です。以下の4つのステップで行われます。
- 予熱(プレヒート): 金属ワークを電気炉などで樹脂の融点以上に加熱します(通常200℃〜400℃)。
- 浸漬: 加熱されたワークを、空気で舞い上がった樹脂粉末(流動床)の中に数秒間浸します。
- 溶融・平滑化: 金属の余熱で粉末が溶け、均一な皮膜を形成します。必要に応じて「後熱」を行い、表面をより滑らかにします。
- 冷却: 水冷または空冷を行い、硬化させて完了です。
2. 主要樹脂別の特徴比較(PE、ナイロン、エポキシ、PP)
使用する樹脂によって、耐薬品性や機械的強度が大きく異なります。用途に合わせた樹脂選定が重要です。
| 樹脂名称 | 種類 | 主なメリット | 代表的な用途 |
|---|---|---|---|
| ポリエチレン (PE) | 熱可塑性 | 安価、耐食性・耐薬品性に優れる、ソフトな感触。 | カゴ、フェンス、配管部材、日用品。 |
| ナイロン (PA) | 熱可塑性 | 極めて高い耐摩耗性と耐衝撃性。滑り性が良い。 | 自動車部品、スプラインシャフト、ファンガード。 |
| エポキシ (Epoxy) | 熱硬化性 | 優れた電気絶縁性と密着性。強固な皮膜。 | モーターコア、バスバー、電子部品。 |
| ポリプロピレン (PP) | 熱可塑性 | 軽量で耐熱性・剛性が高い。吸湿性が極めて低い。 | 化学プラント部品、医療用部材。 |
3. 流動浸漬法のメリット・デメリット
メリット
- 圧倒的な厚膜: 一度の処理で0.2mm〜1.0mm以上の厚膜形成が可能。
- 複雑形状への対応: 液体に近い挙動をするため、網状や複雑な形状の裏面まで均一に付着。
- エッジカバー性: 金属の角(エッジ)部分にもしっかり樹脂が回り込む。
- 環境負荷の低減: 溶剤を使用しないためVOC(揮発性有機化合物)が発生しない。
デメリット
- 耐熱性の制約: ワークを高温に加熱するため、プラスチック等の熱に弱い素材には不向き。
- 薄膜制御の難しさ: 0.1mm以下の薄い皮膜を作るのには適さない。
- 色替えのコスト: 流動槽の洗浄が必要なため、多色展開は静電塗装より手間がかかる。
- 加熱エネルギー: 大型の加熱炉を必要とするため、エネルギー消費が大きい。
4. 結論:流動浸漬法を選ぶべきシーン
流動浸漬法は、「長期的な防錆」「強力な絶縁」「厚い保護膜による安全性」が求められる金属製品に最適です。特に、屋外で使用される建材や、高い信頼性が求められる自動車・電機部品において、代替困難な塗装技術として重宝されています。