FEP(フッ素樹脂)コーティング 技術解説ガイド
FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合樹脂)は、PTFEの優れた化学的特性を受け継ぎつつ、熱可塑性(溶融流動性)を備えたフッ素樹脂です。焼付時に樹脂が溶融して流れるため、PTFEよりも緻密でピンホールのない連続膜を形成できるのが最大の特徴です。本ガイドでは、防食性や離型性に秀でたFEPコーティングの全容を解説します。
FEPの主要特性
緻密な皮膜(ピンホールレス)
焼付時に樹脂が溶融するため、極めて緻密な皮膜を形成します。薬液の浸透を防ぐ必要がある防食用途において、PTFE以上の性能を発揮します。
優れた非粘着・離型性
PTFEに匹敵する低い表面エネルギーを持ち、非常に優れた離型性を示します。粘着性の高い樹脂や食品の付着を防止し、メンテナンス性を向上させます。
広範な耐薬品性
ほとんどの化学薬品に対して不活性です。緻密な膜厚と相まって、タンクや攪拌機といった化学プロセス装置の保護に最適です。
透明性と平滑性
フッ素樹脂の中でも透明度が高く、表面が滑らか(低粗度)に仕上がります。センサー保護カバーや、液残りを嫌う配管内面への施工に適しています。
安定した電気絶縁性
体積抵抗率が大きく(>10¹⁸ Ω·cm)、高い絶縁破壊強度を持ちます。吸湿性ゼロのため、高湿度下でも電気特性が変化しません。
耐候性・耐UV性
紫外線による劣化がほとんどなく、長期間の屋外曝露でも物理的特性を維持します。過酷な屋外インフラや航空宇宙分野でも信頼されています。
膜厚の設計と選択
標準離型仕様 (20〜40μm)
食品金型やゴム成形金型など。薄膜ながらも溶融による平滑な面が得られ、優れた離型性を発揮します。
中膜厚仕様 (50〜100μm)
耐薬品性と非粘着性の両立が必要なロール類や配管部品。浸透防止効果が高まります。
重防食仕様 (200μm〜)
強酸・強アルカリを扱う化学タンク内面など。多層コーティングにより、薬液浸透を物理的に遮断します。
テクニカルデータ(PTFE比較)
| 項目 | FEP 代表値 | PTFE(参考) |
|---|---|---|
| 常用耐熱温度 | -196℃ ~ +200℃ | ~ +260℃ |
| 成形性(焼付) | 溶融流動(緻密膜) | 焼結(微多孔質) |
| 体積抵抗率 | > 10¹⁸ Ω·cm | > 10¹⁸ Ω·cm |
| 摩擦係数(動摩擦) | 0.1 ~ 0.2 | 0.05 ~ 0.1 |
| 透明度 | 高い | 不透明(白色) |
| 吸水率 | < 0.01 % | 0.00 % |
FEPコーティングに関するQ&A
技術的な留意点
FEPは熱可塑性樹脂であるため、高温域(200℃付近)では樹脂が軟化し、物理的な耐摩耗性が低下する傾向があります。摺動(擦れ)が激しい箇所での高温使用には注意が必要です。
また、溶融流動性があるがゆえに、複雑な形状のワークにおいて「角(エッジ)」の部分で樹脂が引けてしまい、膜が薄くなることがあります。設計段階でR(角丸)を大きく取るなどの配慮が、高品質なコーティング維持に繋がります。

