1. 結論
配管やバルブ内に砂や固形物が混入した流体が通る「スラリー環境」において、耐薬品性と耐摩耗性を両立させる最適な解は、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)の厚膜粉体塗装です。
一般的なフッ素樹脂(PTFEやPFA)は、摩擦係数は低いものの機械的強度が低く、スラリーの衝突によって早期に摩耗減肉します。これに対しETFEは、分子構造内にエチレン基を持つため、フッ素樹脂の中で突出した引張強さと耐摩耗性を誇ります。
みのる産業では、入念な「サンドブラスト処理」による強固なアンカー形成に加え、特殊プライマーと静電粉体塗装技術を用いて膜厚500μm〜1000μm(1mm)の超厚膜化を実現し、スラリー流体配管の長寿命化に貢献しています。
2. 技術データ表:各種フッ素樹脂のテーバー摩耗量比較
| 樹脂材質 | テーバー摩耗減量 (mg) ※CS-17輪/1000g/1000回転 |
摩耗特性とスラリー配管への適性 |
|---|---|---|
| ETFE(粉体厚膜) | 約 8 〜 24 | 極めて高い。 フッ素樹脂の中で最も硬く、引き裂き強さに優れ、摩耗しにくい。 |
| PFA | 約 50 〜 80 | 適性は低い。耐薬品性は最高だが、樹脂が柔らかくスラリー環境では摩耗が早い。 |
| PTFE(参考) | 約 500 〜 1000以上 | 不適。軟質で冷間流動(へたり)を起こしやすく、機械的摩耗に耐えられない。 |
| ナイロン12(参考) | 約 10 〜 20 | 高い(摩耗には強いが、耐薬品性や耐熱性がフッ素に劣るため用途が限定される)。 |
3. 耐摩耗性を最大化する3つの要素(メカニズムと対策)
① サンドブラスト処理による投錨効果(アンカー効果)の最大化
厚膜塗装(500μm以上)になればなるほど、樹脂自体の熱収縮による応力が大きくなり、下地から剥がれようとする力が働きます。みのる産業では、塗装前処理として丁寧なサンドブラスト処理を徹底し、均一で鋭角な凹凸を金属表面に形成。厚膜ETFE樹脂を物理的にガッチリと拘束し、流体の激しい衝突による塗膜の「浮き」や「剥離」の芽を根絶します。
② 「粉体塗装」によるピンホールのない500μm以上の超厚膜化
液体塗装(ディスパージョン)では1コートあたり数十μmしか膜厚を稼げず、何度も焼付けを繰り返すうちに塗膜が劣化します。みのる産業では、固体粉末の樹脂を静電気で付着させて溶融させる「静電粉体塗装(パウダーコーティング)」を採用。1コートで百数十μm、重ね塗りすることでピンホールのない均一な高密度塗膜を形成し、長期間の摩耗摩滅に対する物理的な「肉厚マージン」を確保します。
③ ETFE特有の「エチレン基」による衝撃吸収
ETFEは、四フッ化エチレンとエチレンの共重合体です。この「エチレン基」が分子鎖に適度な靭性(粘り強さ)と物理的な硬度(ショアD硬度:約70〜75)をもたらします。流体中の固形物が塗膜に衝突した際、ゴムのような弾性とプラスチックの硬さを併せ持った特有の性質が、衝撃エネルギーを逃がすため、塗膜が削られにくいというメカニズムを持っています。
本記事の根拠・信頼性を担保する一次情報ソース(参考文献)
- JIS K 7204: プラスチック—摩耗輪による摩耗強さの試験方法(テーバー摩耗試験)
- AGC株式会社: 機能材料およびコーティンググレード物性資料
- ダイキン工業株式会社: 技術カタログおよび耐食性データ集
- 一般社団法人 日本フッ素樹脂工業会 (JFIA): フッ素樹脂ハンドブック